「仕事のことが頭から離れない・・・」
「考えることがたくさんありすぎる・・・」
「激変していく世の中でこの先が不安・・・」
心がざわざわしてしまいがちな昨今、脳を休め、心を客観視してコントロールする習慣の「マインドフルネス」に注目が集まっています。
今回、数々の日本企業にマインドフルネスを導入、組織や人材の育成に関わっている荻野淳也先生にお話を伺いました。
荻野 淳也(おぎの じゅんや)先生
合同会社wisdom2.0 Japan 共同創設者
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート 代表理事
慶応大学卒、外資系コンサルタントやベンチャー企業のIPO担当や取締役を経て、リーダーシップ開発、組織開発の分野で、一部上場企業からベンチャー企業までを対象にしたコンサルティング、トレーニング、エグゼクティブコーチングに従事。
ミッションマネジメント、マインドフルリーダーシップ、マインドフルコーチングという軸で、リーダーや組織の本質的な課題にフォーカスし、リーダーや組織の変容を支援している。Googleで開発されたSIYの認定講師。
書籍は「世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方」(日本能率協会出版 共著)、監修・解説として「マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命」(サンガ出版)「スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック」(ジェームス・ドゥティ著 プレジデント社)など多数。
目次
マインドフルネス専門家の荻野淳也先生にインタビューしてきました!今こそ役立つマインドフルネスとは?
今回、ZOOMで荻野先生にマインドフルネスについてインタビューさせて頂きました。
早速解説していきます。
マインドフルネスに挑戦したいのですが、忙しくてもできるでしょうか?
「コップを両手できちんと持ち、意識をここに向ける」といったことでもいいのです。
実は、心の状態は身体が作っています。所作から心を作ることもできるんです。
僕たちは、心が落ち着くのは、周囲に安心安全な環境があるからだと思っています。それもあるけれども、自分の所作からも、落ち着いた心の状態は作れるのです。
マインドフルネス瞑想は毎日しなくてはいけませんか?
5分もとれなくても今に集中すればマインドフルネスになるんですね・・・!それを聞いて安心しました。
マインドフルネス瞑想は毎日しなきゃだめでしょうか?
毎日が理想なのですが、「毎日絶対やらなきゃダメ!」という強制ではないですね。
僕は常々、効果を感じなくても、できれば毎日、できれば8週間、そしてそのまま一生の習慣にしてください、と言っています。マインドフルネスはそれくらい大切なことだと思います。
では、習慣にするにはどうすればいいか。時間と場所を決めるといいですね。
この時間この場所で5分間呼吸に集中するなど決めてしまうのが有効だと思います。それを毎日のルーティンの中に組み込むんです。
朝起きて、すぐ5分時間をとるとか、お昼休みまず5分瞑想してからランチにするとか、3時のおやつとともに瞑想をするとか。
あとは夜寝る前、お風呂の湯舟のなか、歯磨き前……
必ず毎日していることってありますよね。それと組み合わせると習慣化しやすいです。
マインドフルネスにおける継続性の重要さは論文でも提唱されています。参考にしてみてください。
毎日行うことでマインドフルネスの効果が感じられるようになりますか?
なるほど。毎日習慣にするとマインドフルネスの効果が感じられるようになるのでしょうか?
マインドフルネスの効果というよりは、「マインドフルな状態」が自分についてきます。
効果という言葉ですが、人はどうしてもすぐに効果を求めてしまうんですね。すっきりしたとか、穏やかになったとかですね。でも、それだけがマインドフルネスではないので、効果が感じられなくても、できれば8週間やってみてほしい。
途中で、いや私には向いていませんでしたって辞めちゃう人は、「すっきりしない、雑念ばかりわいてくる」と言って終わっちゃうんですね。
僕は「それに気づいていることがマインドフルネスなんだよ、それでいいんです」って言うんです。
気付くだけでマインドフルネス、なんですね!
はい。
「すっきりするもの、リラックスするもの」ということをゴールとして捉えると、私には向いていないんだって、すぐ評価判断して終わってしまう。マインドフルネスでは手放すべき「評価判断」が出るんですね。
もともとマインドフルネスは仏教の世界からきているんですが、仏教の世界では、特に禅の世界では「効果は求めるな」と言われています。ですから、効果を強調しすぎないこともマインドフルネスの大切な部分だと思ってます。
実は、効果を感じても感じなくても継続するということが「効果的」なんです。必ず、少しずつ身体が反応して、マインドフルな心がつくられてきていますよ。
マインドフルネス瞑想の呼吸に集中する方法は?
早速マインドフルネスをやってみたくなってきました。
マインドフルネス瞑想の呼吸に集中する方法を教えて頂けますか?
僕は5つの手順で行う方法を紹介しています。
- まず、空気の流れを感じてください。
- お腹と胸がふくらんだりしぼんだりしている感覚を感じてください。
- 新鮮な空気が入ってくる感覚と、力が抜ける感覚を感じてください。
- 自分の感覚が捉えているものを言葉で表しましょう。例えば、「お腹がふくらんでる、縮んでいる、息を吸っている、吐いている…」
- それから呼吸の数をカウントしてください。
これなら僕にもできそうです。
言葉に表すと集中しやすい人もいれば、ただただ感じるほうが集中しやすい人もいます。
呼吸に注意を向けることも、その人にあったやり方があるんです。まずそれを見つけていただけるといいと思いますね。
コロナ禍の時代、先行きが見えなくて不安です。心がざわつくのを感じますが、マインドフルネスは役立つでしょうか。
コロナ禍の情勢で不安を感じています。他にもこういった方は多いのではないかと思うのですが、マインドフルネスは役立つでしょうか。
今は、変化が非常に激しくて、答えのない時代です。大きな気候変動などもあり、これからも先は読めないでしょう。新型コロナウイルスの社会的現象によって、先の読めない時代ということが、象徴的に明らかになったと感じます。
そのなかで、この先どうなるんだろうとか、未来に対して不安や恐れを感じるのは普通です。でも、変化が激しく先の読めない時代という前提で、「じゃあどういう風に僕たちは生きていったらいいのか」と考えることですね。意識して変化に適応していかなくてはいけません。
マインドフルネスは今の時代にどう活かしていけるでしょうか?
マインドフルネスは今の時代にどう活かしていけるでしょうか?
今の時代に求められているのは、4つの力だと思っています。
- アジリティー(俊敏性):周囲の変化についていく素早さ
- アジャスタビリティー(適応性):変化に適応していく力
- フレキシビリティー(柔軟性):連続している変化に柔軟に対応していく力
- レジリエンス(回復力):落ち込んだときに立ち直れる力
この4つの力の土台になるものこそがマインドフルネスで、「今ここ」に集中し、かつ「評価・判断を手放す」という状態だと思います。
評価・判断を手放すことによって、未来に対する不安や、引きずっている過去の執着から解放される、ということですね。
俊敏性とマインドフルネスの意外な関係性について
俊敏性(アジリティー)もマインドフルネスに関わっているのは、ちょっと意外でした。もう少し詳しく教えて頂けませんか?
そもそもなぜ俊敏に動けないかというと、考えてしまうからです。悩み、考え、思考が先にたってしまう。大切なのは、目の前に起こった現象に対して感じて動くこと。動きながら考えるというスタンスです。
しかし、現代のように予想ができないこと、過去の経験に照らし合わせて経験のないことが起こると、行動が止まってしまいがちです。考えて動くクセが、アジリティーを疎外しているんですね。
その点、マインドフルでいる人は、「今ここ」に注意を向け、「判断を手放している状態」です。「これは過去に起こったことではないぞ」という判断を手放しています。
言い換えると「判断を加えず、あるがままに見ている状態」です。
だから、常に新しく新鮮に物事が見られる。その状態で「感じて動く」ことができるのが、アジリティーとマインドフルネスの関係だと思います。
荻野先生が主催されている、オンラインでマインドフルネスの集いについて詳しく知りたいです。
先生は「朝のマインドフルネス」や「3時のマインドフルネス」など、オンラインでマインドフルネスの集いを主催していらっしゃいますよね。
こちらの活動についても詳しく教えて頂けませんか?
マインドフルネスがたくさんの人の一生の習慣になってほしいんですね。習慣化には3つ要素があり、「きっかけ」と「ルーティン」と「報酬」です。
「きっかけ」は、これをやってみたい、身に着けたいと思う出来事だったり、この記事を読んだりということですね。
「報酬」とは、やってて救われたとか心地よいとかすっきりしたとかいうことですね。
でも、最後の「ルーティン」が曲者で、基本一人だときびしいんですよ。でも、この「朝のマインドフルネス」など、集まりの場にくると、みんながやってるから自分もやろうと思える。その場の繋がり感は、大きな力をもちます。
場のつながりによって習慣化できるということなんですね。
目を瞑って座っているだけなんですが、「自分と同じようにこの時間を大切にしている人がいる」とか、「これだけ多くの人がちゃんと習慣にしようとしているんだ」と思うと、継続の意欲が湧きます。皆さんそうじゃないかなと思うので、是非参加してみてください。
マインドフルネスの基本の呼吸と姿勢をおこなってみよう!
荻野先生の書籍より、マインドフルネスの基本の呼吸と姿勢について引用させて頂きました。ぜひ、参考にしてみて下さい!
<基本の姿勢>
- 椅子に腰かけ、足は組まずに地面に足裏がついていることを意識して座ります。
- 背骨の1本1本がまっすぐにスッと伸びるイメージで背筋を伸ばし、肩を3~4回まわして、胸をひらいていきます。
- 両手をヒザの上に乗せます。
- 目を閉じるか半眼にしてゆったり構えます
<基本の呼吸>
呼吸は鼻から吸って鼻から吐き出し、吸うときにお腹がふくらむ、吐くときにお腹がへこむ腹式呼吸でゆったりおこないます。
「心のざわざわ・イライラを消すがんばりすぎない休み方
すき間時間で始めるマインドフルネス」より
荻野淳也 文響社
教えて荻野先生!<マインドフルネス瞑想Q&A>
最後に、DO-GEN読者の方から寄せられたマインドフルネスに関する質問について、荻野先生に質問させて頂きました。
【Q】嫌なことのフラッシュバックなど不安が襲ってきたときにはどうすればいいですか?
【A】マインドフルな3呼吸を実行してみましょう。
マインドフルな状態に戻る練習の3呼吸を紹介します。
【1呼吸目】は 自分の呼吸に意識を向ける。
【2呼吸目】で、自分の身体の感覚に集中します。ちょっと胸のあたりに緊張が走ってるな……などと観察する。ただ観察するだけでいいんです。
【3呼吸目】は今大切にしたいことを思い出す。「そうだ、料理作るんだった」とか、「こういう段取りをするんだった」など、そのとき大切にしたいことを思い出してください。
要は過去の記憶のせいで、パニックになりかけている。それを、もう一回「今ここ」に戻せばいいのです。そのためには、フラッシュバックしてきた、プチパニックになりそう!と思ったら、「3呼吸」と思い出してください。
(※うつなどで、精神科医の先生にかかっているなどの場合は、マインドフルネスのプラクティスの実践は必ず担当医師と相談の上、実施してください。)
【Q】マインドフルネスを、アプリなどを使っておこなうのはどう思いますか?
【A】マインドフルネス瞑想のアプリ、いいと思いますよ。
僕も仕事柄、20種類くらいマインドフルネスのアプリをスマホに入れています。
リマインド機能を使ったり、何日間、累計何時間おこなってきたのかを記録したりしています。初心者の方はアプリで音声のガイドがあると、行いやすいかもしれませんね。
今こそ役立つマインドフルネスについてまとめ
実際のやり方なども解説させて頂きましたので、少しでも生活のお役にたてて頂けたら嬉しいです。
荻野先生はマインドフルネスに関する書籍を出版されています。それぞれAmazonの「Kindle Unlimited」の読み放題対象や「Audible」のオーディオブックとしてもありますので、ぜひチェックしてみて下さい。
また、荻野先生は「wisdom2.0 Japan」という、サンフランシスコ発のマインドフルネスのカンファレンスも運営されています。よりマインドフルネスについて深く知りたい方は、ぜひチェックしてみて下さいね。
最後までお読み頂き、ありがとうございます!
荻野淳也先生が発起人として実行運営を行っている「wisdom2.0 Japan」。サンフランシスコ発の世界最大のマインドフルネス・カンファレンスです。
日本が抱えるあらゆる問題に対して、どうした切り口で解決の糸口を見出していくのか、デジタル時代におけるマインドフルネスやよりよい生き方の重要性について深く理解できる機会です。