「睡眠」と「記憶」にはどのような関係があるのでしょうか?
今回は2つの論文をご紹介したいと思います。
目次
睡眠と記憶について 1
昼寝は記憶の定着、学習に効果的?
まずはこの論文を見ていきましょう。
Splitting sleep between the night and a daytime nap reduces homeostatic sleep pressure and enhances long-term memory
https://www.nature.com/articles/s41598-021-84625-8
日中の昼寝は、記憶の符号化と定着を促進すると言われています。
この研究では、昼寝が1日の学習にどのような影響を与えるのか、また、十分に睡眠をとった人と睡眠制限を受けた人で学習に影響はあるのかということについて調べるため、1日8時間か6.5時間の睡眠をとってから学校で勉強する青年112名の記憶力を比較しています。
睡眠時間は「夜」と「夜+午後の90分程度の昼寝」に分け、8時間連続、8時間を分割、6.5時間連続、6.5時間を分割、の4つ睡眠パターンの実験群に分け、記憶のテストで評価しています。
その結果、「夜」と「夜+午後の90分程度の昼寝」に分けたグループは、6.5時間および8時間のいずれにおいても、記憶のテストの結果はどちらも良好でした。
また、分割睡眠をしたグループは、夜間の睡眠時間が減少したにもかかわらず、日中の眠気を感じることもなく、パフォーマンスにも悪影響を及ぼしませんでした。
以上の結果から、昼寝を毎日の睡眠スケジュールに組み込むことで、十分な睡眠が得られ、学習効果も得られることがわかっています。
睡眠と記憶について 2
もうひとつ、こちらの論文から睡眠と記憶についてご紹介します。
Sleep Loss Gives Rise to Intrusive Thoughts
https://www.cell.com/trends/cognitive-sciences/fulltext/S1364-6613(21)00057-7?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS1364661321000577%3Fshowall%3Dtrue
「嫌な記憶」を思い出さないためには?
日常生活の中でふとしたことが不快な過去の経験を思い出すきっかけとなります。
「嫌な記憶」をコントロールするため、記憶を抑制することで不要な記憶から意識を解放することができます。
さらに、記憶を抑制することは多くのメリットがあります。
例えば,「嫌な記憶」を抑制することができると,その記憶が弱まり,考えが再び蘇ってくる可能性が低くなります。
さらに,記憶の抑制は,過去の不快な経験に伴う感情的な負荷を軽減し,嫌な記憶の感情的を和らげます。
このような記憶抑制の効果は,健全な気持ちのコントロールに不可欠です。
逆に言えば、記憶の抑制を持続できないと健全に気持ちをコントロールできない、ということでもあります。
睡眠不足になると「嫌な記憶」を思い出しやすくなる?
最近の研究では,睡眠不足の人は不要な思考を抑制しづらいということが明らかになっています。
睡眠不足になると、海馬や扁桃体へのトップダウンの抑制性投射が阻害され、余計なことを考えないようにする能力を低下するのです。精神的に疲れている状態でも思考を抑制しづらくなります
睡眠不足の人はうまく記憶の制御ができず、さらに一旦制御できるた後も再発しやすい傾向にあり、嫌な記憶が再び意識下に現れることがあります。
睡眠と記憶についてのまとめ
・睡眠不足が記憶に問題を起こす
・睡眠を夜と昼寝に分割することで学習効果は高くなる。
・睡眠が「嫌な記憶」を抑制させ、正常な気分でいやすくする
・しかし、睡眠不足であると記憶の抑制が働かず、嫌な記憶が蘇ってしまいやすくなる
ということがこの2つの論文からわかったことです。
皆様も昼寝を取り入れるなどして記憶をコントロールしてみてください。