皆さんは「ヒートショック」という言葉をご存じでしょうか。そしてこの「ヒートショック」により、年間で1万9千人以上が亡くなっていると推測される事をご存知でしょうか。
※厚生労働省・人口動態統計および消費者庁分析より
冬場のお風呂場で発生しやすくなるこの危険な現象を改めて解説しつつ、ちょっとした対策でその症状を防げるので本記事を通してお伝えしたいと思います!
目次
そもそも「ヒートショック」とは
温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することなどが原因となり起こる健康被害のことで失神や心筋梗塞、不整脈、脳梗塞を起こすことがあります。
一般社団法人 日本ガス石油機器工業会WEBサイトよりhttps://www.jgka.or.jp/gasusekiyu/heatshock/contents1.html
このように定義づけされており、建物の中でも寒暖差が激しくなる冬場に発生しやすくなるため注意喚起が毎年なされている現象です。
「ヒートショック」が起こりやすい環境と症状
前述した通り寒暖差が主な原因となるため、身体全体が露出して温度変化が起きやすいお風呂場でよく発生するとされています。
①暖房などで温められたリビングなどから脱衣場へ移動する
②温められていない脱衣場で衣類を脱ぐ【急激な体温の低下・血圧の上昇】
③寒いからとすぐに熱いお風呂へ入る【急激な体温の上昇・血圧の下降】
この数分以内での体温と血圧の急激な上下動により心筋梗塞、脳卒中や湿疹による溺死を招くとされているのです。
「ヒートショック」による死亡者数の推測
寒い脱衣場と熱いお風呂だけで人が死ぬなんて…と軽く受け止める方が多いために事故が絶えないと思われる「ヒートショック」。
消費者庁のリリースによると、自宅及び居住施設の浴槽における死亡者数は毎年5,000人前後となり、10年前と比べると増加傾向にあります。
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「厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究 平成 24~25 年度総括研究報告書(研究代表者:堀進悟)」において、入浴中急死の実数は死因が「溺死」と記載された例の数倍に上ると推測されている。平成 24 年 10 月から平成 25 年3月までに3都県(東京都、山形県、佐賀県)において調査した、救急隊が入浴に関連した傷病と判断した患者で心肺停止に至った件数等を基に、人口比を用いて全国で起こった件数を推計した結果、病死等も含めた全国の入浴中の急死者数を年間約 19,000 人としている。
更に、この事故の実態から推測された本当のヒートショック関連の急死者数は19,000人とも言われております。2020年の交通事故死者数は2839人と言われているため、事故死の6倍以上のリスクが浴室にあると考えるとほおっておけなくなるのではないでしょうか。
実は簡単「ヒートショック」対策
これだけのリスクある現象ですが、実はちょっとしたアクションでリスクを大幅に軽減する事が出来るとされています。
”入浴前”の対策
寒いからと浴槽のお湯の温度だけを上げるのではなく、脱衣場および浴室内の温度を上げる事が最適解です。
①浴槽を「自動」や「追い炊き」ではなくシャワーでお湯を貯める
②浴槽の蓋を開けておき、蒸気で温める
③気温が落ちる日没前に入浴する
④食事・飲酒後1時間以上空けてから入浴する
⑤脱衣場にエアコンや持ち運べるヒーターを用意しておく
⑥断熱改修工事や浴室暖房乾燥機を設置する
⑤⑥のような費用が掛かる対策を想定して、面倒くさがる方もいるかもしれませんが①から④のような対策であれば手軽に始められる対策と言えるでしょう。
”入浴中”の対策
身体が冷え切っているからと長湯をして、体温が上がりすぎる事も危険です。湯温は 41 度以下、湯につかる時間は 10 分までを目安にしましょう。
また高齢者自身が対策をしきれないのであれば、同居する家族などが近くに居て対策をしたり急な体調変化に備える事も重要です。
”入浴後”の対策
普段意識していませんが、浴槽に浸かる事は実は全身をかなりの水圧にさらしていることになります。急に浴槽から立ち上がるとその圧の変化で血管が一時的に膨張し貧血状態になりえると言われています。慌てず、ゆっくり立ち上がる習慣を身に着けるようにしましょう。
「ヒートショック予報」を見る
外気温との寒暖差が理由でもあるため、天気予報の「tenki.jp」が提供する「ヒートショック予報」を毎日チェックするのもお勧めです。
「ヒートショック」のまとめ
筆者も両親が恒例となった事で、体調の変化が気になってきた昨今、改めて冬場のお風呂について調べていた際に気になったトピックなのでまとめさせていただきました。
ヒートショックを起こしやすい高齢者こそ、こうした内容を知らなかったり対策をしなくなりがちです。是非、同居されるご家族が見守ってあげたり、世帯が分かれていたら声掛けをする習慣をお互いが身に着けて悲しい事故を防いでいきましょう!