「睡眠の質」を上げたい——そう思ったとき、多くの人は寝具(マットレスや枕)に目を向けます。
もちろん寝具は大切ですが、意外と見落とされがちなのが「パジャマ」。
肌に直接触れ、体の動きやすさ、蒸れにくさ、温度の感じ方に影響する“いちばん身近な寝具”です。
本記事では、素材・形・ディテール・季節別の選び方を、日々の暮らしで使える視点に絞って詳しく解説します。

目次
パジャマが「睡眠の質」に与える体感的な影響
パジャマは、寝具と肌の間にある“調整役”。
生地が硬すぎたり、汗がこもったり、動きにくかったりすると、どうしても就寝前のリラックス感が損なわれます。
逆に、肌あたりがやさしく、通気・吸湿・保温のバランスが良く、動きやすい服だと、入眠前の「くつろぎモード」へ自然に移行しやすくなります。
また、季節や体質に合った温湿度のコントロールも大切。
夏は汗を素早く逃がす、冬は空気を含んで暖かい、そんな素材・仕様を選ぶだけで、就寝時の快適さは大きく変わります。
- 肌あたり:チクチク・ごわつき・縫い目の段差やタグの位置は意外なストレス源。フラットシームやタグ外付けが快適。
- 温湿度:「通気性・吸湿性・保温性」のバランスが鍵。季節や寝室の環境に合わせて選ぶ。
- 可動性:肩や股ぐりのつっぱり、ウエストゴムの締め付け、ボタンの当たりは要確認。
睡眠の質を上げるパジャマ:素材で選ぶ
パジャマ選びでまず注目したいのは「素材」です。
なぜなら素材は、肌あたり・熱のこもりにくさ・乾きやすさ・見た目といった睡眠の快適性に直結する最重要ポイントだからです。
同じ形のパジャマでも素材が違うだけで、着心地や眠りの深さに大きな差が生まれます。
ここでは代表的な素材を取り上げ、季節ごとの使い分けやお手入れのヒントも交えて詳しく解説します。
コットン(綿)/ コットン100%
最も定番であり万能な素材がコットン。吸水性と肌なじみの良さが魅力で、敏感肌の人でも安心して選びやすい素材です。
しかも織りや編み方によって風合いが大きく変わるのも特長です。
例えば、天竺(Tシャツ地)は伸縮性がありカジュアルに使え、ブロードはさらりとしたシャツライクな雰囲気に。
サテンは光沢となめらかさが高級感を演出し、ワッフルやパイルはふんわりとした質感でタオルのようなやさしい肌触りが得られます。
迷ったときはまずコットンを選べば間違いがなく、オールシーズン使える点も大きな魅力です。
ダブルガーゼ(綿ガーゼ二重)
軽く、空気を含みやすく、汗を吸って乾きやすいのがダブルガーゼの魅力。
春から初夏、そして初秋にかけて心地よく使える素材で、洗うほどに柔らかさが増す“育てるパジャマ”としても人気です。
近年は「ガーゼ パジャマ」という検索キーワードで探す人も多く、ナチュラル志向の方や赤ちゃん用寝具にも選ばれるほどのやさしさが評価されています。
シルク / シルクサテン
高級素材の代名詞ともいえるシルクは、しっとりとなめらかな肌触りが大きな魅力。
軽さとドレープ感があり、身体の動きに自然に沿うので就寝中もストレスが少なく、素肌に直接触れるとひんやりとした心地よさを感じやすい素材です。
夏場の寝苦しい夜でも蒸れにくく、冬も一定のあたたかさを保ってくれるため、一年を通して使えます。
デリケートな素材のためお手入れには注意が必要ですが、適切にケアすれば長く愛用できる特別感のあるパジャマです。
リネン(麻)
リネンは昔から夏の定番素材として親しまれてきました。
最大の特長は通気性・放湿性の高さで、汗をかいてもすぐに乾くため寝苦しい夜でも快適です。
一方で織りや糸の太さ次第では春や初秋にも活躍し、意外にロングシーズン対応できる万能素材。
新品のうちはやや硬さを感じる場合がありますが、洗濯を重ねるごとにくったり柔らかくなり、肌になじむのも楽しみの一つです。
フランネル(綿起毛)/ コーデュロイ
秋冬の定番といえばフランネルやコーデュロイ。
空気を蓄えてぬくもりを保ちやすいため、寒い季節に心強い素材です。ふわっと起毛した生地は肌あたりも柔らかく、布団に入った瞬間の“ひやっと感”を和らげてくれるのも嬉しいポイント。
暖房を控えめにしても快適に眠れるため、光熱費の節約にもつながります。
冬の「睡眠の質」を左右する重要素材といえるでしょう。
モダール / テンセル(再生繊維系)
モダールやテンセルといった再生繊維系素材は、木材パルプを原料に作られており環境配慮型としても注目されています。
落ち感となめらかさがあり、肌に沿うフィット感を好む人に人気です。
また吸放湿性にも優れているため、汗をかいてもムレにくく、春夏のルームウェアとして着てそのままベッドに入るといったスタイルにも向いています。
フリース / ニット(合繊系含む)
真冬の防寒用として根強い人気を誇るのがフリースやニット。
軽さと暖かさを兼ね備え、厚着しなくても十分な保温性を確保できます。
ただし素材によっては汗抜けが弱い場合があるため、通気・吸湿設計やインナーとの組み合わせで調整するのがおすすめです。
さらに静電気が起きやすいのも合繊系の特徴なので、柔軟剤や静電気防止スプレーを活用すると快適性が高まります。
素材別比較
肌あたり | 通気/吸湿 | 保温 | 季節目安 | お手入れ | |
コットン | ◎ | ○ | ○ | 通年 | 容易 |
ダブルガーゼ | ◎ | ◎ | △〜○ | 春/初夏/初秋 | 容易(型崩れ注意) |
シルク | ◎◎ | ○ | △〜○ | 春夏中心 | やや繊細 |
リネン | ○(育つ) | ◎ | △ | 春/夏 | 容易(皺は風合い) |
フランネル | ◎(起毛) | △ | ◎ | 秋/冬 | 毛羽立ち注意 |
モダール/テンセル | ◎ | ◎ | △〜○ | 春夏 | 洗濯ネット推奨 |
パジャマ選びに迷ったら、まずは「綿100%」「ダブルガーゼ」「フランネル」の三枚体制をそろえてみるのがおすすめです。
コットン100%はオールシーズン使いやすい万能素材で、日常の定番として活躍してくれます。
さらに春夏に向けては通気性と軽さに優れたダブルガーゼを取り入れると、汗ばむ夜でもさらりと快適に過ごせます。
そして寒い季節には、しっかりと空気を含んで保温するフランネルを選べば、布団に入ったときの冷えをやわらげてくれます。
この3種類をそろえておけば、季節の変化や気温差に柔軟に対応できるため、年間を通して「睡眠の質」を安定させやすいのが大きなメリットです。
まずはこの基本の三枚をベースに、自分のライフスタイルや好みに合わせて少しずつバリエーションを増やしていくと、より快適なパジャマ環境が整っていきます。

睡眠の質を上げるパジャマ:形・ディテールで選ぶ
同じ素材でも、パターン(形)やディテールが合っていないと快適さは半減。
以下の観点をチェックしましょう。
トップスの形:前開き or かぶり
- 前開き(ボタン/スナップ):温度調整がしやすく、就寝前の「服を整える」所作が儀式化しやすい。胸元の当たりが気になる人は薄めボタンや比翼仕立ても。
- かぶり(クルー/ヘンリー):Tシャツ感覚で手軽。首まわりが詰まりすぎないもの、肩線が落ちすぎないものが快適。
ボトムス:ウエスト・裾・股上
- ウエスト:平ゴム+ドローストリング(紐)で微調整できると便利。きつすぎるゴムは睡眠中の体勢変化で気になることも。
- 裾:リブ/ゴム入りは足さばきが良く、めくれ上がりにくい。開放感重視ならストレート。
- 股上:しゃがむ/寝返りでつっぱらない深さが目安。ローライズ過ぎは冷えやすい。
袖丈・パンツ丈・ポケット
- 袖丈:夏は半袖/七分、冬は長袖+袖口リブが実用的。
- パンツ丈:季節と寝具の長さに合わせる。短パンは夏向き、九分丈はオールラウンダー。
- ポケット:あると便利だが、腰ポケットは寝返りで違和感になる場合も。
縫製・副資材
- タグ位置:首元内側タグは外付け/プリントだと快適。
- 縫い代・パイピング:装飾過多は当たりが出やすい。フラットシームが理想。
- ボタン素材:厚すぎ・重すぎは避ける。寝姿勢で胸元に当たらない配置が◎。

睡眠の質を上げるパジャマの季節別おすすめ
同じ人でも、季節で快適基準は変わります。
「通気・吸湿・保温」のバランスを季節に合わせて調整しましょう。
春(朝晩ひんやり・昼は動くと暑い)
- 素材:ダブルガーゼ/薄手コットン/リネン混
- 形:前開き長袖+九分丈パンツ。ボタンで温度調整
- ポイント:薄手のカーディガンを枕元に置き、夜間の冷えに備える
梅雨(湿度が高い・肌離れ重視)
- 素材:リネン/テンセル/モダール/ワッフル
- 形:七分袖+七分丈パンツ or ショートパンツ
- ポイント:汗抜け重視。速乾インナーを下に重ねるのも手
夏(熱帯夜・蒸れ&べたつき対策)
- 素材:リネン/薄手コットン天竺/カットソー
- 形:半袖+短パン/薄手ノースリーブワンピース
- ポイント:エアコン設定と合わせ、肌に張り付きにくい生地を選ぶ
秋(寒暖差が大きい・空気が乾いてくる)
- 素材:コットン/サテン/軽フランネル
- 形:長袖+長パンツ。裾リブで熱を逃しにくく
- ポイント:薄手腹巻・レッグウォーマーで微調整
冬(乾燥・冷え・布団に入る瞬間が冷たい)
- 素材:フランネル/パイル/フリース(汗抜けに配慮)
- 形:長袖リブ袖+長パンツ/ワンピース+レギンス
- ポイント:インナーで重ね着、首・手首・足首を温めると楽
季節の変わり目には「長袖/半袖」「長パンツ/短パン」を1アイテムずつ持ち替えて組み合わせると、出費を抑えながら快適さを維持できます。

睡眠の質を上げるパジャマのサイズ・フィットと重ね着
就寝中は、起きているときよりも体が自由に動きます。
寝返りや体勢の変化に合わせて、パジャマが突っ張ったり絡まったりしないことが快適な睡眠の大前提。
理想は“少しゆとりがある”フィット感で、締め付けすぎず、かといってダボつきすぎないバランスです。
きつすぎると肩や腰、ウエスト部分が気になり眠りが浅くなりやすく、逆に緩すぎると生地がめくれたり絡まったりして、寝返りの邪魔になることがあります。
サイズ選びの目安
パジャマは普段着と同じサイズで選ぶのではなく、睡眠中の動きを考慮したサイズ感がポイントです。
以下を参考にすると、自分に合った快適な一着が見つかりやすくなります。
- 肩幅:落ちすぎない(+1〜2cm程度)。肩線がずれると寝返りの際に突っ張りを感じやすい。
- 身幅:胸囲+8〜12cm程度のゆとり。深呼吸しても圧迫感がなく、布団の中で自然にリラックスできる。
- 袖丈/裾丈:手首や足首で引っかからない長さ。短すぎると冷えやすく、長すぎると寝返り時にまとわりつきやすい。
- ウエスト:平ゴム+紐で微調整できるタイプが理想。体勢や季節に合わせてフィット感を変えられる。
レイヤリング(重ね着)
パジャマ一枚で体温調整するのが難しい季節には、重ね着(レイヤリング)を工夫するのも有効です。
ただし「重ねすぎ」は逆に動きにくさを招くため、シンプルかつ必要最小限を心がけましょう。
- インナー:汗を吸って肌から離す役割があり、オールシーズンの快適さを左右します。夏は吸湿速乾素材、冬はコットンやシルクで保温性を意識するとよいでしょう。
- 小物:腹巻、レッグウォーマー、薄手ソックスなどで“冷えやすい部位だけを部分的に加温”するのが効果的。布団全体を厚くするより体感温度を調整しやすく、眠りの妨げになりにくいのがメリットです。
- NG例:フード付きトップスや大きな金具、大ぶりのポケットは、横になったときに背中や脇腹に当たりやすく不快。就寝用には避けた方が無難です。

睡眠の質を上げるパジャマのお手入れ・長持ち術
お気に入りのパジャマは、正しいケアで気持ちよさが長続き。素材別に基本を押さえましょう。
洗濯のコツ
- ネット使用:型崩れ・擦れ防止(特にサテン/シルク/再生繊維)
- 中性洗剤:色・風合いを守りやすい
- 柔軟剤:使いすぎは吸水低下の原因に。適量を守る
- 裏返し:表面の毛羽立ち・ボタンの当たりを軽減
干し方・アイロン
- 日陰干し:色あせ・劣化を防ぐ(シルクは特に必須)
- ハンガー幅:肩が突っ張らないサイズを使用
- スチーム:シワ戻しに便利。サテンや綿ブロードで見映えUP
保管・買い替え
- 防臭/防湿:乾燥剤を入れ、湿気の少ない場所へ
- 買い替え目安:生地の薄摩耗・ゴムの伸び・毛玉/毛羽立ちが増えたら見直し

睡眠の質を上げるパジャマのよくある質問
Q1. ルームウェアで寝てもいい? パジャマとの違いは?
家で過ごす服=ルームウェアは、外出や作業も想定した“見た目/耐久”寄りの設計が多め。
睡眠用のパジャマは、肌あたり・可動性・温湿度調整にフォーカスしている点が違いです。
寝ることを目的にするなら、パジャマを一着用意すると快適さを実感しやすくなります。
Q2. 何枚持っておくと便利?
通年素材1、暑い季節用1、寒い季節用1の計3枚が最低ライン。
洗い替え・気温差を考えるなら4〜5枚体制だと安心です。
Q3. 上下別でもOK?
OKです。上下別ブランド/素材でも、肌あたり・通気・保温のバランスが取れていれば問題ありません。
上はサテン、下はガーゼなどのミックスも快適。
Q4. プレゼントに選ぶなら?
サイズ選びが難しい場合は、ややゆとりのある前開き+調整できるウエストが無難。
ダブルガーゼやコットンサテンなど、肌なじみの良い素材が喜ばれやすいです。
購入前チェックリスト(保存版)
- 素材の表示(綿100/混率)と生地の厚みは季節に合っている?
- 首・肩・ウエスト・裾の“当たり”や締め付けはない?
- 縫い目・タグ位置・ボタンの大きさ/素材は気にならない?
- 自宅の洗濯方法(ネット使用/陰干し)に合う?
- 就寝環境(エアコン温度・寝具の保温力)とバランスが取れる?
関連記事も参考に:「睡眠の質」特集 / 「パジャマ」関連記事
「睡眠の質」を底上げするパジャマの選び方まとめ
パジャマは、寝具と同じくらい睡眠の体感を左右する重要アイテムです。
素材(季節×通気・吸湿・保温)/形(前開き・かぶり・ワンピース)/サイズ(ゆとり・丈)/ディテール(縫い目・タグ・ボタン)の4点を押さえるだけで、就寝前のリラックス感はぐっと整います。
最初の一歩は「綿100%のダブルガーゼ」や「通年のコットン天竺」。
冬はフランネル、夏はリネンや薄手コットンを揃えて、三枚体制を作ると年間を通じて快適に。
“正解”は一つではありません。寝室の温湿度、寝具、体質、好みの手触り——あなたの暮らしに合うベストバランスを探す過程そのものが、睡眠の質を整えるルーティンになります。
今日からぜひ、パジャマ選びをアップデートしてみてください。
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