セキスイハイムが行った睡眠状況に関する実態調査の結果、実に中年層の9割が「睡眠に対して不満を持っている」と答えており、睡眠不足は現代日本で深刻な問題となっています。
そんな中、最近は「3〜5時間の睡眠で問題なく生活できる」という「ショートスリーパー」と呼ばれる人々が注目されています。
彼らは一体なぜ短い睡眠時間でも大丈夫なのか、どうすればそうなれるのか、解説していきます。
「3時間しか寝なくても大丈夫」、「8時間寝ないと頭が働かない」など、人によって必要な睡眠時間は様々です。そこで、巷で噂のショートスリーパーについて解説していきます。
ショートスリーパーの定義について!何時間以下の睡眠?
ショートスリーパー(短眠者)の定義は、「必要な睡眠時間が6時間以下」とされており、平均睡眠時間の7〜8時間に比べるとその名前通り短くなっています。
ただ、注意しておきたいのが「ただ単に睡眠時間が6時間を割っている」という意味ではなく、「6時間以下の睡眠で健康に活動できる」という意味であるとされています。
ショートスリーパーの割合は日本人に何パーセント?
日本人のショートスリーパーの割合は実に5~8%程度(10%や1%以下という説もあります)と非常に少ないようで、一般的な睡眠時間(7〜8時間)が必要な割合は約80%、8時間以上のロングスリーパー(長眠者)が10%程度とされています。
ショートスリーパーの食事には特徴があるか
一部のショートスリーパーは一日一食など、特殊な食生活を送っているという情報もありますが、現段階の信頼できるエビデンスのあるショートスリーパーの研究や論文で「食事」と「ショートスリーパー」の相関性は確認されていません。
ただ、極端な暴飲暴食や偏りのある食生活では睡眠の質が下がる恐れがあるとされており、バランスのとれた食生活を意識することは決してマイナスの方向には作用しないでしょう。
ショートスリーパーは短命になる?寿命について
「ショートスリーパーは寿命が短い」「短眠者は命の危険に晒されている」などの文言を目にすることは少なくありません。
しかし、「睡眠時間が短くても健康的である」と医学的にも診断された”れっきとしたショートスリーパー”は、短い睡眠時間であっても体調を崩すこともすくないそうです。
ただし、これは医学的に診断されたショートスリーパーの例であり、専門的な知識もないまま自身を「ショートスリーパー」と思い、無理して睡眠時間を削った場合はそうではありません。
睡眠不足のもたらすリスクとして「ストレスの増加」や「免疫系の弱化」、「慢性疾患のリスク増大」などが挙げられ、どれも非常に深刻です。ショートスリーパーであるかどうかは医師に一度判断を仰いだ方がよいでしょう。
ショートスリーパーの著名人・有名人
ショートスリーパーとされている著名人や有名人、歴史上の偉人は多く、中には1日の睡眠時間が4時間程度の人もいるそうです。
例えば、3時間しか眠らなかったとして「ナポレオン=ボナパルト」が有名です。しかし実際、秘書のブーリエンヌによると「ナポレオンは養生家であり、一昼夜のうちに7時間ほど睡眠し、午後には少しのうたた寝もした」と言われています。
情報が正しく伝わっていない可能性もあるので鵜呑みにせず、慎重に判断した方が良いでしょう。
反対にロングスリーパーでも有名人はいて、例えばアインシュタインは1日10時間眠っていたそうです。睡眠時間と偉人に関係があるとは言い難いことがわかります。
以下にはショートスリーパーであると言われている有名人をリストしてみました!
エジソン
発明王としても知られる「トーマス・エジソン」ですが、彼の睡眠時間は4~5時間程度。白色電球を発明した彼ですが、その恩恵を最大級に受けていたのもまた彼であるとされています。
明石家さんまさん
糸井重里さんとの対談で「小学校くらいの頃から睡眠時間が少なかった」と答えており、その理由は「話すことが好きで常にテンションが上がりっぱなしだったから」とのこと。
具体的な睡眠時間には言及していませんでしたが、医師からも「あまり寝ない人」という診断も受けていたそうです。
尾田栄一郎さん
雑誌内のインタビューで「朝の5時に起きて深夜の2時まで作業をする。2時から5時まで寝ている」と答えていました。ジャンプきっての大御所漫画家の尾田さんですが、長期連載の秘訣の一つに「ショートスリーパー」という要素があるのかもしれません。
ショートスリーパーのメリット・デメリット
ショートスリーパーがかなりの少数派であることは理解していただけたと思います。では、ショートスリーパーの方は実生活にはどのようなメリット・デメリットが存在するのでしょうか。
ショートスリーパーのメリット
ショートスリーパーの最大のメリットはやはり普通の人に比べて「起きている時間が長い」ということでしょう。
人より睡眠時間が1時間短いだけで、年間では約15.2日分も自由になる時間が多いという計算になります。
常に時間に追われている現代人にとっては羨ましい限りですね…。
ショートスリーパーのデメリット
あなたが先天的なショートスリーパーであるならば、特にデメリットはなさそうです。短い睡眠時間でも健康に過ごすことができます。
しかし、訓練でショートスリーパーになろうとしている場合は、睡眠不足による心身への被害の危険性があるので決してオススメはできません。
ショートスリーパーになるには
これまで、ショートスリーパーの定義からそのメカニズム、有名人の例などについて解説してきましたが、この章では、「ショートスリーパーにはなれるのか?その方法は?」ということについて解説していきます。
訓練でショートスリーパーになれるのか?
それでは、みなさんが気になっているであろうショートスリーパーにはなれるのか、ということについて解説します。
結論から言ってしまうと、先天的にショートスリーパーではない人が、訓練や習慣付けによって完全なショートスリーパーになるのは「ほぼ不可能」と言ってよいでしょう。
ショートスリーパーに関する論文や信頼できる医学的なエビデンスのある主張のうち、最新かつ最も有力なショートスリーパーの要因は「遺伝子」とされています。
ショートスリーパーの因子となっている遺伝子「DEC2」に変異がある人は健康を害することなく4〜6時間程度の睡眠で十分だとされています。(全てのショートスリーパーのケースを説明できるわけではありません)
つまり、現在ではショートスリーパーは「遺伝的な」ものであるという説が有力で、巷で流行っている「ショートスリーパーになる方法」は医学的根拠を欠いている場合が多いのです。
なにも考えずにそれらを実践してしまうと、睡眠不足によって健康が損なわれてしまう恐れがあるため、慎重に情報を精査してください。
ショートスリーパーになりたい方への注意点
まず、前提として、現在医学的には「ショートスリーパーは遺伝子の変化によって生まれる」という説が有力であり、訓練や習慣付けでショートスリーパーになれるとは医学的に証明されていないことを頭に入れておいてください。
ショートスリーパーでない人が「毎日3時間ほどの睡眠で目覚められるようになった」などの声を聞くこともありますが、これは疲労が回復したわけではなく、脳がただ単に錯覚しているだけである、という医師のコメントもあります。
30分でできる?ショートスリーパーになる方法
ただし、「睡眠の質」を改善することで睡眠時間を短くし、必要な睡眠時間を短縮してもスッキリと過ごせるという方法があります。
睡眠の質を上げるには、「毎日一定の時間に起床」し、朝日を浴び、バランスの取れた食生活をとることが大切とされ、暴食や睡眠直前のアルコールの摂取、強い光を見る等の行為は睡眠の質を下げる恐れがあります。
ショートスリーパーの睡眠メカニズム、医師の研究結果から解説!
ショートスリーパーの人数がかなり少ないということはお分かりいただけたと思います。それでは、その少ない割合でしかいない「ショートスリーパー」はどのようにして短い睡眠時間でも健康を損なわずに生活できているのでしょうか。
医師の診断と研究の結果、ショートスリーパーの特徴の秘密は「遺伝子」にあった
2009年に最初のショートスリーパー遺伝子を発見した、カリフォルニア大学サンフランシスコ校神経科学教授のフー博士率いる研究グループは、新たにふたつめの遺伝子を発見した事で話題になりました。
この遺伝子をもつ人は「睡眠から目覚めやすく、より長く活動的でいられる」脳の構造を持っているとのことです。
かつてヒトの睡眠に影響する「DEC2」と呼ばれる遺伝子がショートスリーパーの鍵となっている事は分かっていましたが、この遺伝子の突然変異がショートスリーパーと密接に関係があるとされています。
この遺伝子突然変異がある人は特に健康を損なうことなく、4~6時間の睡眠で睡眠が完結するというのです。しかしそれは、一部のショートスリーパーを遺伝的に説明できても、全てのショートスリーパーのメカニズムの解明には繋がりませんでした。
新たに発見された「遺伝子の突然変異」
ショートスリーパーの要因が他にもあるのではないか、と考えた研究チームはさらに研究を進め、「DEC2」の突然変異が確認されていないにもかかわらず、3世代でショートスリーパーの家族の特定に至ったのです。
研究チームはDNAシークエンシングと連鎖解析のふたつの手法を用いて、この家族に特有の突然変異をゲノムから探し出しました。
特定されたのは「β-1アドレナリン受容体遺伝子(ADRB1)」と呼ばれる遺伝子における、たったひとつの塩基置換の突然変異だったのです。これはDEC2と同様に、自然なショートスリープと関係している事が判明しました。
また、この家族で同じ突然変異がない人たちは、ショートスリーパーではなかったそうです。
「Exome Aggregation Consortium(ExAC)」と呼ばれるヒトゲノムのデータベースによると、この突然変異をもっているのは約10万人に4人ほどの割合で、遺伝子的にショートスリーパーである人はかなり少ないそうです。
ショートスリーパーについてのまとめ
- ショートスリーパーは6時間以下の睡眠で健康を損なわない人のこと
- ショートスリーパーは日本の場合10%以下
- ショートスリーパーは「DEC2」という遺伝子の突然変異によるものとされている
- 最近では「DEC2」以外のショートスリーパーの要因も明らかになっている
- 医師に「ショートスリーパー」と診断された人は、必ずしも短命になるとは限らない
- ショートスリーパーの著名人は実は多くいる
- ショートスリーパーになるのは現段階ではほぼ不可能とされている
- 睡眠の質を向上させれば必要な睡眠時間を多少削っても問題ない場合がある
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ショートスリーパーではない人にとって、ショートスリーパーは憧れの存在であり羨望の対象ですが、現段階では遺伝的な要素が強いとされており、未だに分かっていない部分も多い領域です。今後、ショートスリーパーに関してなにか重要なことが判明する可能性もおおいにあります。
最後までお読み頂きありがとうございます!