「しっかり寝ているはずなのに昼間眠くなる」という方はいませんか?それはもしかしたら「睡眠負債」が溜まっているせいかもしれません。睡眠負債とは、少しずつ溜まっていく睡眠不足のこと。自分ではしっかり寝ているつもりでも、溜まっている可能性があるところが睡眠負債の怖いところ。そこで今回は、睡眠負債の体への影響や解消法、睡眠負債のチェック方法などをご紹介しましょう。
目次
知らないうちに溜まる睡眠負債とは?
「睡眠不足」というと、毎日2〜3時間ぐらいしか寝ていない人をイメージする方は多いのではないでしょうか。そして睡眠不足が体に悪影響を与えることも、多くの方が認識済みでしょう。
でも「私は毎日6時間は寝ているから大丈夫」と思っている人も安心できません。もしかしたら睡眠負債が溜まっているかもしれないのです。
睡眠負債とは、睡眠不足が少しずつ積み重なり、その影響が心や体に無自覚のうちに現れる様を表す言葉で、スタンフォード大学のウィリアム・デメント博士によって提唱されたものです。この言葉通り、睡眠負債の怖いところは「知らないうちに少しずつ溜まっていく」ところ。自分ではしっかり睡眠時間をとっているつもりでも、自分の最適な睡眠時間にわずかに足りていなければその分がどんどん負債として溜まっていくのです。
睡眠負債には、パフォーマンスが低下する、病気のリスクを高めるなど悪影響がたくさんあります。自分で気がつかないうちに様々なリスクを背負っているとしたら、怖いですよね。
さらに怖いのが、この睡眠負債は溜まりに溜まるとなかなか解消できないところ。スタンフォード大学で行われた実験によると、1日わずか40分ほどの睡眠負債であったとしても、それが何日も続くと解消するのに3週間ほどかかることがわかったそう。週末寝だめするくらいでは、睡眠負債は解消できないことがわかりますね。睡眠負債は早期発見、早期解消が重要なポイントです。
睡眠負債を放っておくと色々な悪影響が…
では睡眠負債があると、どんな悪影響があるのでしょうか。
集中力や注意力が低下する
アメリカのペンシルバニア大学で、徹夜のグループと6時間睡眠のグループの注意力や集中力の変化を比較した実験が行われました。
その実験で得られた結果は、「2晩徹夜した脳の状態と、6時間睡眠を2週間続けた脳の状態はほぼ変わらない」という驚きのものでした。しかも6時間睡眠のグループは、自分の脳の衰えを自覚していなかったのだそうです。このことから、睡眠負債は無自覚のうちに、集中力や注意力の低下を招くことがわかります。
また交通安全を推進するアメリカの団体の調査によると、睡眠時間が平均6時間未満の人は、交通事故の死亡率が13%も高かったといいます。これも睡眠負債が脳のパフォーマンスを低下させた結果と言えるでしょう。
病気のリスクが高まる
睡眠負債は、脳の効率を低下させるだけでなく病気のリスクも高めることがわかってきているといいます。
特に今注目されているのが、睡眠不足とガンの関係です。2014年にアメリカのシカゴ大学で行われた実験では、睡眠不足のマウスはがん細胞が増えやすいことがわかりました。このマウスは明確な睡眠不足の状態だったため、睡眠負債についても同じことがいえるかは定かではありません。
ところが東北大学で行われた追跡調査によると、平均睡眠時間が7時間以上だった女性よりも、平均睡眠時間が6時間以下だった女性は乳がんになるリスクが1.6倍になったといいます。これらのことから、睡眠負債にもガンのリスクを高める可能性があるかもしれませんね。
認知症のリスクを高める
スタンフォード大学の西野精治さんによると、「睡眠には脳の老廃物を排出する働きがあり、睡眠不足になると脳の老廃物が蓄積して認知症のリスクを高める可能性がある」そうです。
あなたは大丈夫?睡眠負債を症状でチェック
睡眠負債は、早期発見早期解消が重要なポイントといいますが、無自覚に溜まる睡眠負債を発見するのは難しそうですよね。でもいくつかの特徴的な症状があるそうです。以下に紹介しますので、確認してみてくださいね。
2020年に放送された「世界一受けたい授業 スタンフォード式夏の睡眠の質を上げる方法」によると、以下の項目で2つ以上チェックがつく方は、隠れ睡眠負債の可能性が高いそうで、4つ以上チェックがつくと確実に睡眠負債がある状態、6個以上だと破産寸前だそうです。
・スマホやパソコンを寝る寸前まで見てしまう
・寝付くまで5分ほどしかかからない
・朝起きた時にスッキリしない
・仕事や家事のやる気が出ない
・気づくとうたた寝していることがある
・休日はいつもより1時間半以上長く寝てしまう
・休日明けなのにすでに疲れている
なおNHKの「NHKスペシャル 睡眠負債が危ない」のページでは、当てはまる項目をクリックするだけで睡眠負債のリスクを確認できるチェックリストがあります。こちらもぜひ見てみてくださいね。
NHKスペシャル 睡眠負債が危ない
https://www.nhk.or.jp/special/sleep/
睡眠負債の解消法
上のチェックで睡眠負債が溜まっていたという方のために、睡眠負債の解消方法をご紹介しましょう。
1番良い方法は、毎日の睡眠時間を少し長くすること。先ほども述べたように、睡眠負債は寝溜めくらいでは解消しません。スタンフォード大学の西野先生は、「睡眠負債の解消には、できれば7時間以上毎日寝るようにしてみてほしい」と語っています。
とはいえ、適切な睡眠時間は人それぞれ異なるもの。少しずつ睡眠時間を延ばして様子を見てみるのも良いかもしれません。
どうしても睡眠時間を確保できない場合は、睡眠の質の向上を意識すると良いそう。これについて西野先生は、「特に寝始めの90分を大切にしてほしい」と語っています。最初の90分の質を高めることで、睡眠時間の短さをある程度カバーできる可能性があるそうです。
睡眠負債は素早い対処がカギ
睡眠負債は無自覚のうちに溜まりますが、確実にあなたの体や心を蝕みます。そうならないうちに素早く発見して解消しましょう。今回ご紹介したチェックリストなどを参考に、睡眠負債のたまり具合を確認してみてくださいね。